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ブリヂストン、センシングによりタイヤの摩耗状態を推定する技術を開発
ブリヂストンは11月14日、路面と接しているタイヤから接地面の情報を収集、解析し、路面情報やタイヤの状態を把握するセンシング技術「CAIS(Contact Area Information Sensing)」のコンセプトに基づいて、タイヤの摩耗状態(残り溝の深さ)を推定する技術を開発したと発表した。
タイヤの過度の摩耗はグリップ力の低下や故障の原因となり、事故を引き起こす危険性もある。今回の技術は、車両の通常走行時において、タイヤの内面部に取り付けたセンサが、タイヤの踏面部の挙動変化を取得、その挙動変化の情報を解析することで、タイヤ踏面部の摩耗状態を推定し、運転席でそれをリアルタイムで把握することを可能とするもので「CAIS」としては3つ目の技術(CAIS III)となる。
そもそものCAISは、TPMS(Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧監視システム)の延長に位置する技術で、CAIS Iはタイヤ内部に2つの歪みセンサを設置し、タイヤの歪み度合を図ることで、直進しているのか、コーナリング中なのかを判別する技術。CAIS IIは周方向の加速度センサを搭載し、路面の状態によって変化する振動を解析することで、「乾燥」「半湿」「湿潤」「シャーベット」「積雪」「圧雪」「凍結」の7つの路面コンディションを判別する技術で、2011年よりネクスコ・エンジニアリング北海道と共同で高速道路の路面状態のリアルタイム監視に向けた研究が進められているという。
CAISの概要
今回のCAIS IIIは径方向(回転方向)の加速度をMEMSセンサによって検知することで、タイヤの摩耗度を推定するもの。具体的には回転するタイヤが路面に接地すると、タイヤにかかる遠心力(加速度)がセンサの位置により変化し、センサ部が地面側にある際は回転ではなく、直進することになるため加速度がかからなくなるほか、タイヤと路面の界面部分は外側にたわんでおり、そこでは逆にタイヤの曲がり具合が異なるため、加速度が増加するという特性がある。このたわみ具合は新品のすり減っていないタイヤと摩耗しているタイヤでは傾き具合が異なり、摩耗度が高くなると接地端部の傾きが増加し、加速度が増す傾向があるという。この傾きを数値化し、それを演算処理することで、摩耗状態を推定しようというのが今回の技術の核心部分となる。
タイヤの摩耗具合の推定方法の概要
また、実際にはクルマの本体側にデータの受信機と演算コンピュータを設置する必要があるため、センサデータを送信する仕組みも必要となる。今回の研究では2.4GHz帯の省電力無線方式を採用したが、トランシーバICなどを含めシステムとして数mWほど必要とのことであったので、コイルと磁石による回転体による発電機をタイヤの中に設置し、そこから電力を供給することで、データ送信を実現したという。
この結果、高速道路を用いたトラックによる実地試験で、推定された摩耗状況と、実際の摩耗状況を比較したところ、摩耗レベルで70%ほど残っている状態で、その誤差は±1mm程度を達成したという。
実際にトラックを用いて行った実証実験の結果、実際の摩耗具合と推定値の誤差は±1mm程度であることが確認されたという
同社では、トラックのタイヤの摩耗具合は設置場所により異なるため、そうしたタイヤの適切なローテーションタイミングの決定などを実現することで、タイヤを最後まで使い切ることを可能とし、その結果としての経費削減を実現したいとしており、同技術を商用車に適用できればとしている。ただし、実際に商用化のめどはまだ立っていないとのことで、今後は、さまざまな使用条件(タイヤ種や取り付け軸)に対するアルゴリズムの実地検証を進めていくほか、さらなるセンサシステムの小型・軽量・省電力化を目指した開発を行っていくとしている。
タイヤの内側。奥に見えるのが発電機、手前に見えるのが無線通信機