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麻生潤(SYNCHRONICITY)×不破大輔(渋さ知らズオーケストラ)対談 良いフェスの条件って?
『フジロック』がスタートしてから、もう少しで20年。現在では大小さまざまな規模のフェスやイベントが全国各地で開催され、それはもはや「文化」と呼ぶに相応しいレベルで、日本に根付いたと言っていいだろう。そんな中、2005年にスタートした都市型フェス『SYNCHRONICITY』が、今年で10周年を迎える。ライブハウスを舞台にした都市型フェスというのは、大規模な野外フェスなどに比べると、スタートのハードル自体はそこまで高くはないかもしれない。しかし、その分競争は激しく、明確なビジョンを持っていなければ、継続が非常に難しいものでもある。その点、『SYNCHRONICITY』は「CREATION FOR THE FUTURE」をテーマに掲げ、音楽のみならず、さまざまな芸術の要素が混ざった唯一無二の空間作りを目指すことで、多くの人から愛されるフェスへと成長を遂げ、10年という歴史を刻んできた。この事実は、もっともっと評価されてしかるべきことのように思う。
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そして、そんな『SYNCHRONICITY』の理念を体現しているバンドといえば、それは「渋さ知らズオーケストラ」以外にはありえない。フェス主催者の麻生潤が「世界で一番好きなバンド」と語る存在であり、2007年から隔回ごとに出演し、大トリを担い続けている渋さ知らズは、まさにフェスの守護神なのだ。そこで今回は、4月11日の『SYNCHRONICITY’15』の開催を前に、麻生と渋さ知らズの中心人物・不破大輔との対談を実施。二人の対話から見えてきたのは、やはりその空間を作る人と人とのつながりの重要性であった。
■喜怒哀楽を全部一緒にして、歓喜に昇華するような音楽というか、そういう意味で、渋さは日本のソウルミュージックだと思います。(麻生)
―渋さ知らズオーケストラは2007年の『SYNCHRONICITY』に出て以来、ずっと隔回ごとに出演しているわけですが、麻生さんにとってどんな存在なのでしょう?
麻生:渋さ知らズオーケストラは「THAT’S SYNCHRONICITY」で、個人的にも世界で一番好きなバンドなんです。喜怒哀楽を全部飲み込んで、歓喜に昇華するような音楽というか、そういう意味で、渋さは日本のソウルミュージックだと思う。それって『SYNCHRONICITY』のコンセプトにもぴったりで、だからこそ、毎回トリで出てもらってるんです。
不破:このイベントのトリは結構プレッシャーですよ(笑)。「何で俺たちの前にROVOなんだ?」とか「何で俺たちの前にZAZEN BOYSなんだ?」って(笑)。いつも素晴らしいバンドばっかりなんでね。
―不破さんにとっては『SYNCHRONICITY』はどんな場所だと言えますか?
不破:今の若者たちがメインのお客様で、その中でおっさんおばさんのバンドがやるわけだけど、結局人間と人間のお付き合いなので、今面白いと思うもの、楽しいと思うものをそのままストレートにやると、反応が波紋のように広がっていく感じがしますね。あと僕らバンドマンって、見られるのが商売なんですけど、僕は結構お客様一人ひとりの顔を見ていて、つまんなそうにしてる人がいたら、「よし、あの人を笑わせてやろう」とか思うんです。この小屋(『SYNCHRONICITY』のメイン会場であるTSUTAYA O-EAST)がね、お客様がよく見える会場なんですよ。
―毎回トリを務める上では、どんなことを考えていらっしゃいますか?
不破:そこまでにいろんなすごいアーティストがかわるがわる出てきてるわけで、「さて、この流れを引き受けて、どうしようか?」っていうのをいつも考えてますね。上手くいってるかどうかはわかんないけど、そこがすごく面白い。ホントに稀有な場所だと思いますよ。例えば、『フジロック』の「ORANGE COURT」とか、僕らが出るのは大体ああいう一定のラインナップだったりするんですけど、『SYNCHRONICITY』のラインナップは幅広いから、いつも360度の経験ができるというかね。
―麻生さんにとって、これまでの『SYNCHRONICITY』での渋さのライブの中で、特に印象に残ってる回を挙げるとすると、いつになりますか?
麻生:やっぱり一番最初に出てもらえたときは、ホントに嬉しかったですね。当時は僕自身もっともっと未熟で、クラブイベント的な考え方が強かったから、ディスカウントで結構人を入れちゃって、会場のキャパを超えてパンパンになっちゃったんですよ。でも、ライブカルチャーとクラブカルチャーのクロスオーバーがコンセプトだったし、そういう中で渋さにライブをやっていただいて、「これは幸せだな」って思いました。
―当時は会場が代官山UNITで、ステージ上もパンパンだったでしょうね(笑)。
麻生:そうですね(笑)。あと2013年も印象的で、その年はROVOにも出てもらったんですけど、両方とも大ベテランじゃないですか? そのエネルギーのぶつかり合いって、目に見えるものじゃないですけど、お客さんもそのうねりが何となくわかるんじゃないかっていう、そのぐらいすごかったんですよね。
―不破さんもそのときうねりのようなものを感じてましたか?
不破:もちろん、ROVOの後だもん(笑)。
―ですよね(笑)。前回麻生さんに取材をさせてもらったときに、「『SYNCHRONICITY』は小宇宙だ」って話になったかと思うんですけど、言ってみれば、渋さやROVO自体も小宇宙みたいなもので、それがぶつかり合うって、宇宙戦争みたいな感じですよね(笑)。
麻生:小宇宙が集まってさらに大きな宇宙になる。宇宙に際限はないですからね(笑)。
■「渋さが好き」とか「ROVOが好き」って来てる人でも、1日終わると、その日出たどのバンドも好きになっちゃうような、そういう場の力があると思います。(不破)
―『SYNCHRONICITY』の良さっていうのは、音楽だけじゃなくて、その空間自体に魅力があるということもポイントですよね。
麻生:今ってイベントの数がすごいいっぱいあるから、出演者のラインナップだけを見ると、どうしても一緒に見えちゃうんですよね。そういう中で、「この空間に来なければ感じられないものがある」っていうのはすごく大切で意識してます。こうやって今日不破さんとお話させていただいてるのも、すぐにはできないことだと思うんです。長年一緒にやらせていただいて、だからこそインタビューでぜひご一緒させていただきたいと思ったし、不破さんも受けてくれた。そういう関係性も含めて、『SYNCHRONICITY』の空間になってるんじゃないかと思うんですよね。信頼してるチームと一緒にずっと作ってきたし、そういうのもすごく大切かなって。
不破:毎年同時期に開催されてると思うんですけど、あんまり離れてる感じがしないんですよ。前回出たのが、昨日とか一昨日とか先週ぐらいの感じがする。僕が年寄りのせいかもしれないけど(笑)。でも、それはやっぱり連続性が膨らんできてるというか、ずっと地続きだからこそ、そう感じるんだと思うんですよね。もちろん、毎回出る人は違うし、いろんな状況があるから、そのときそのときのものになるんだけど、でも継続した場だっていうのは大きいと思います。
麻生:やっぱり、続けて行くことで信頼が生まれるし、イメージも形作られていくので、そういう意味でも、持続させていくことは大切だと思ってます。
不破:ずっと続けて来てるお客さんがいる一方で、初めて出るバンドについてきたお客さんもいるわけじゃない? でも、すごく親和性が高いっていうか、どんどん混ざっていく感じがするんですよ。もとは「渋さが好き」とか「ROVOが好き」って来てる人でも、1日終わると、その日出たどのバンドも好きになっちゃうような、『SYNCHRONICITY』はそういう場の力があると思います。
麻生:そこはすごく大事ですよね。音楽って根本的には「好み」じゃないですか? その好みを自由に広げられる場所を作りたいっていうのは、すごく考えてます。音楽のクロスオーバーも大事だけど、人のクロスオーバーとか、感情のクロスオーバー、そこがすごく大切だと思うんですよね。
―渋さっていう存在自体がクロスオーバーを体現してるとも言えますよね(笑)。
不破:坩堝みたいなね(笑)。今一番若いのが24歳くらいかな? 上は70何歳だから、50歳くらい差がありますからね。
―『SYNCHRONICITY』のように定期的に出演してるイベントって、他に何かありますか?
不破:『頂 -ITADAKI-』(毎年6月初旬に静岡で開催されている野外フェス)ぐらいですかね。まあ、ラインナップが変わっていくこともひとつの選択肢というか、それを期待してるお客さんもいると思うんです。昔よく出てたドイツのフリージャズのフェスとか、何回か続けて出たんですけど、「じゃあ、次は10年後」みたいな感じで(笑)、でもそういう方が上手くいくこともあるんですよね。音楽の世界って、どんどん新しいムーブメントが起こっていくから。だから、いつか『SYNCHRONICITY』からも、「次は10年後」って言われるかもしれないけど(笑)、呼ばれるうちは出続けたいなって思ってます。
―実際、『SYNCHRONICITY』は毎年新しいことにチャレンジし続けてもいて、今年は初めてO-nestでも同時開催されて、「less than TV(日本のインディーズレーベル)」のバンドが出るんですよね。
麻生:『ボロフェスタ』とかをやってるLimited Express(has gone?)の飯田くんとは前から仲が良くて、「何か一緒にやりたいね」ってたんです。今もうなくなっちゃったイベントとかフェスとかもありますけど、主催者同士がもっと協力し合って何かを作っていく動きがあってもいいと思っていて、飯田くんもそういう考えを持ってる人なんです。
不破:『ボロフェスタ』も面白いですよね。
麻生:面白いですよね。それで何か一緒にやろうって話してるうちに、「less than TV」の企画が立ち上がっていったんです。かなりハードコア / パンク色の強いバンドが多いので、『SYNCHRONICITY』とは「水と油じゃない?」とか言いながら(笑)。
不破:ヨーロッパだと、ロックフェスでもジャズフェスでも、いろんな国のフェスのプロデューサーが、ひとつのフェスにワッと集まるんですよ。そこでいろいろ情報交換が行われてて、それぞれ「うちはこういう色でやりたい」っていうのがありつつも、みんな仲が良くて、協力し合ってるんです。
―フェス同士でお客さんを取り合っててもしょうがなくて、いかに協力して、全体を盛り上げて行けるかが重要ですよね。
麻生:うん、そうだと思いますね。張り合うだけってもったいないし、そこを越えていかなきゃいけないと思う。
不破:そうすれば、あっちこっちで面白いことが起きますからね。こっちはすごく騒がしい、こっちはすごく静か、でもお互いが尊敬し合ってて、ちゃんとそこに交流があるっていうのは、すごい面白いなって思いますね。
■いいフェスって、スタッフがいいんですよ。ウェルカムな感じだと、それだけで演奏が変わります。(不破)
―今海外の話が出ましたが、不破さんが渋さで世界中のフェスやイベントに出る中で、「ここは理想的だな」って思った場所を挙げるとすると、どこが出てきますか?
不破:食べ物はね、北海道の『ライジングサン』(RISING SUN ROCK FESTIVAL) 。ジンギスカン食べ放題(笑)。
麻生:福岡の『Sunset Live』はどうですか?
不破:『サンセット』も美味しかった(笑)。でも、僕ら人数多いし、貧乏だから、北も南もバス移動なんで、大変なんですよ(笑)。
―食以外だと、いいフェスの条件ってどんなことだと思いますか?
不破:いいフェスって、スタッフがいいんですよ。ウェルカムな感じだと、それだけで演奏が変わります。僕らは見本市みたいなフェスにはあんまり出られないから、規模がそんなに大きくないフェスの方が多いっていうのもあるけど……あ、でも『グラストンベリー』(Glastonbury Festival / 1970年からイギリスで行われている世界的な野外フェス)は主催者もスタッフもすごく素敵でしたね。
麻生:YouTubeに映像があがってますよね? 渋さの演奏が始まると人の群れがグワーッて押し寄せてきて、あれ最高です。
不破:「ピラミッドステージ」の一番最初だったんですけど、みんな最初は遠巻きに見てたのが、だんだんわらわらと集まってきて、面白かったですね。長くずっと出てるのは「ジャズ&ワールドステージ」ってとこで、『フジロック』でいう「FIELD OF HEAVEN」みたいなラインナップなんですけど、あそこは演奏してて良かったと思える場所ですね。でもホントに、スタッフの人たちの音楽やお客さんへの愛し方がわかるフェスは気持ちが良くて、そういうときはいい演奏もできるんです。『SYNCHRONICITY』もそういう愛情の深さとか大きさを感じるフェスで、それはたぶん麻生さんの人柄から来るものが大きいんだと思います。
麻生:ありがとうございます。そう言っていただいて嬉しいです。コミュニケーションをとることはやっぱりすごく大事で、当日だけ参加するボランティアスタッフの人もいますけど、そこは分け隔てなくというか、一人ひとりとちゃんと接しようっていうのは、スタッフの中で意識を共有してます。たくさんの人が関わるけれど、みんな1人の人間でかけがえがないですよね。それをしっかり意識共有しながら運営すること、助け合うことって大切で、それがあったからこそここまで続けてこれたんだと思います。
―スタッフのみなさんとは定期的にミーティングとかをされてるんですか?
麻生:もちろんミーティングもやってますが、チームでやってるので飲み会とかそういうコミュニケーションも大切ですね。「新年会やろう!」とか「お花見しよう!」とか(笑)。
不破:大事ですね(笑)。
―楽しむことが大事だと(笑)。
麻生:そうですね。ミーティングで真面目な話をすることももちろん大事ですけど、そうじゃない時間を共有するのも、すごく大切だと思ってます。
―もう一度話を戻すと、不破さんがこれまで参加したフェスの中で、特に印象的だった場所を挙げるとすると、いかがですか?
不破:フランスにナントって街があって、もともと造船業が盛んだったそうなんですけど、不況になって、一時期すごく荒んだ街になっていたそうなんですね。でもあるときから年間予算の10%をアートに使うことにして、ジャズやクラシックのフェスをやったり、映画祭を開いたりして、そのためのオブジェみたいなのを若手のデザイナーがデザインして、職人のおっちゃんたちがそれを作るようになったんです。もともと造船業が盛んだったわけだから。「ラ・プランセス」っていう巨大なクモが有名で、横浜にも来たことがあるんですけど。
―あー、ありましたね!
不破:街の人たちはそのお祭りを心からの喜びにしていて、ああいう場所に行くと、「人っていいなあ」って改めて思いますね。音楽が人をつなげるっていうか、逆に僕らがつなげてもらってるなって。
■『SYNCHRONICITY』の空間で感じたことをそれぞれの生活に持ち帰ってもらって、それが未来につながって行けば、ホントに嬉しいですね。(麻生)
―麻生さんから不破さんに、何か訊いておきたいことはありますか?
麻生:僕が主催者だからそう見えちゃうのかもしれないですけど、『SYNCHRONICITY』で見る渋さって、ホントめちゃくちゃいいんですよ!ご本人たちとしても、「『SYNCHRONICITY』ではいいライブができてる」っていう実感ってありますか?
不破:あんまり言いたくないんですけど……ああいう素晴らしいラインナップの中で、僕らトリをやらせてもらうと、勝ち負け感があって(笑)。「ここでしょぼいことはできない」っていう、ミッションみたいなのをみんな感じてるから、相当カッカしながらやってると思いますよ。別に勝ち負けじゃないっていうのは重々わかってるけど、でもトリの重圧を突破して、みんなを道連れにしちゃえっていう(笑)、そういう気持ちがすごく大きくなりますね。
麻生:僕、渋さが見れる日本人って、ホント幸せだと思うんですよ。海外の話もしましたけど、おいそれとあの大人数で行けないじゃないですか? なので、『SYNCHRONICITY』じゃなくても、日本人は絶対渋さを見てほしい。もちろん音源もいいんですけど、あの音圧や空気感はライブじゃないと感じられないですから。だからこそ、今日僕ひとこと言いたかったんですけど、不破さん煙草めちゃくちゃ吸うじゃないですか?
不破:あー、はい(笑)。
麻生:煙草めちゃめちゃ吸うし、酒もめちゃめちゃ飲むから、心配なんですよね(笑)。一度『SYNCHRONICITY』の後、撤収を終えてさあ帰るかってときに、不破さん階段で潰れてて、えーっ! って思いました(笑)。不破さんには長生きしてもらわないとなので……よろしくお願いします!(笑)
不破:申し訳ございません……肝に銘じておきます(笑)。
―「長生き」の話が出たところで、最後に「未来」の話をしていただこうかと思います。これは前回麻生さんにしたのと同じ質問なんですけど、『SYNCHRONICITY』の「CREATION FOR THE FUTURE」というテーマとかけて、今不破さんが何に最も未来を感じるかを話していただきたいのですが、いかがでしょうか?
不破:「求める心」ですかね。平和だったり、仲良く暮らせる世界であってほしい、そういう心を感じられるところに居たいんですよね。きっとこういうことを感じてる人は世界中にいて、それこそシンクロニシティが起こっていくといいなって。『SYNCHRONICITY』のお客様の中でも、「自分も音楽やろう」って思う人もいれば、「私もこういう場を作りたい」って思う人もいるだろうし、そうやって一人ひとりがその場で感じたことを自分の生活の中に持ち帰って、自分ができることをやる。そういう風につながっていくといいですよね。
麻生:まさに、そうやってつなげていきたいですね。『SYNCHRONICITY』では毎回グリーン電力を使ってて、それはそれで大切なことだと思うんだけど、それですべていいかっていうとそうじゃない。ただそういう仕組みや技術を使うだけじゃなく、そこからさらに一歩踏み込んで、心に訴えかけていくことが大事だと思ってます。そう、単純に、いい音楽を聴いたら、いい空間を感じたら元気になるじゃないですか? それって自然と次のアクションにつながっていくと思うんです。不破さんにおっしゃっていただいた通り、この空間で感じたことをそれぞれの生活に持ち帰ってもらって、それが未来につながっていけば、ホントに嬉しいですね。それってまさに『SYNCHRONICITY』だと思うし、未来って心から生まれていくものだから。