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鉄道トリビア (59) 西武鉄道はヤギを飼っている。一体何のために?
和歌山電鐵の駅長猫「たま」、会津鉄道の駅長猫「ばす」、ひたちなか海浜鉄道の駅猫「おさむ」など、各地の鉄道で「動物職員」が活躍し、人気を集めている。それぞれマスコット的な存在で、広告塔の役目を果たしているようだ。ところで、関東私鉄大手の西武鉄道は、実用的な役割を期待してヤギを飼っているという。その働きぶりを見に行ってみた。
西武鉄道4000系電車
車内はクロスシートでローカルな雰囲気
ヤギが働く駅は西武鉄道池袋線の武蔵横手駅だという。西武池袋駅から特急「ちちぶ」で飯能駅へ。そこから各駅停車で3つ目が武蔵横手駅だ。池袋からは1時間ちょっとである。ちなみに、飯能駅はスイッチバック式の珍しい駅。池袋線は飯能駅を境に運転系統が別れている。秩父方面は4人掛け向かい合わせシートの4000系が使われており、線路も単線でローカル線らしい雰囲気だ。先に進むほど山深く、ここに来るだけでもちょっとした旅気分である。
武蔵横手は島式ホーム1本の小さな駅だった。ホームと列車の写真を撮って、さあ、ヤギさんはどこだろうと探してみたら……いた! 線路の向こうの広場に白いヤギが2頭。のんびりと草を食べていた。
武蔵横手駅に到着。特急が通過する小さな駅だ。この写真にヤギさんも映っていた
ヤギさんは2番線の線路の向こうで飼育されている
西武鉄道の地球環境保護への取り組みの1つ
同社がヤギを飼い始めて、もうすぐ1年になる。その役目は草を食べ……いや「草刈り」だ。それまでこの社有地では、社員がガソリンエンジンの機械で草を刈っていた。この草刈り作業のために、草刈り機を運ぶための車のガソリンと草刈り機が使うガソリンが必要だった。その量は年間で76リットルで、燃焼により年間176kgの二酸化炭素を発生させていた。体積を2リットル入りのペットボトルに換算すると約4万4,680本分になる。ヤギさんたちの活躍のおかげで、これらのほとんどが削減でき、地球環境保護に貢献しているというわけだ。
雄の「そら」
雌の「みどり」
ヤギのいる場所のそばには道路がない。見物できる場所は武蔵横手駅のホーム、または2番線に停車中の電車の窓からだ。ヤギには「そら」と「みどり」という名前がつけられており、そらは呼びかけに応えてこちらを向いてくれた。みどりはマイペースな性格らしく、こちらを知らぬふりで草を食べ続けていた。なんともほのぼのとする光景で、地球環境保護だけではなく、見ている私たちを和ませてくれる存在でもあった。