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シリーズ最終章始動『ふしぎ遊戯』を7つの名シーンで振り返る
『ふしぎ遊戯 白虎異聞』が明日28日発売の「月刊flowers 4月号」
(小学館)に掲載される。1992年から「少女コミック」などで連載された少女漫画『ふしぎ遊戯』(渡瀬悠宇/小学館)のシリーズ最新作となる「白虎編」だ。同シリーズの連載は休載をはさみながら20年にわたる。
《白虎編の読み切りは『異聞』というとおり、初というのに実は主人公ではないキャラの物語??という、これまでにないパターン! なもので、本来主役のはずの『鈴乃』は主役ではありません。》(ブログ「日月の聲」より)
予告が掲載された時、複数のメディアが“連載スタート”と報じたが、残念ながら誤報。だが、「最後の物語がついに始動した」とファンは喜んだ。
『ふしぎ遊戯』は、「四神天地書」という魔力を持った本に吸い込まれた少女が巫女となり、四神(朱雀・青龍・玄武・白虎)に願いを叶えてもらうという異世界冒険ファンタジーだ。四神を祀る4つの国と関わりながら、神獣を召還するため七星士と呼ばれる仲間を集めていく。95年にはアニメ化され、コミックスの累計発行部数は1,700万部をこえる。
高校受験を前に母親とケンカして家を飛び出した美朱(みあか)と親友の唯を中心にした物語、『ふしぎ遊戯』(以下「朱雀・青龍編」)。
最初に「四神天地書」に吸い込まれた多喜子を主人公にした『ふしぎ遊戯 玄武開伝』(同「玄武編」)。
「白虎編」のスタートを前に、「朱雀・青龍編」「玄武編」を7つの名シーンで振り返る。
◆美朱うらやまし過ぎ問題
朱雀の巫女になった美朱は、七星士のひとり・鬼宿(たまほめ)と恋仲になる。そこに割って入る星宿(ほとほり)。
鬼宿「…オレは美朱が好きです ──だからたとえ誰であろうと渡さない」
星宿「──お前が私を1人の『男』とみなしたら 私もただの『男』になる …美朱 お前を愛する1人の『男』にな」
美形で温和な性格。七星士であると同時に紅南国皇帝というハイスペックな星宿に口説かれても鬼宿を選んだ美朱に乾杯。
◆ふしぎ遊戯的中国語講座
少女漫画のヒーローらしく、鬼宿は甘い言葉を次々投下する。
「…ほんの3か月ほどなのに もう何千年も離れてたみたいだ」
「もうオレはお前のいない世界なんて考えられない……」
「オレが迷ワクならそれでもいい でも…オレはお前が好きだ!」
なのにはじめて“愛”という言葉をつかったのは手紙。
青龍を祀る倶東国が休戦の条件として提示したのは鬼宿の譲渡。…紅南国を出る時、手紙の最後に書き添えられたのは「我愛?(愛してる)」。鬼宿ズルい。
◆「生きてりゃあねえ」って言ったのに…!
玄武の巫女の「神座宝」を手に入れるため、北甲国にきた美朱たち。奉納されている場所をつきとめ、ひとり向かった柳宿(ぬりこ)の前に、青龍七星士・尾宿(あしたれ)が立ちはだかる。からくも勝利するが、重傷を追った柳宿はかけつけた美朱たちに看取られ、息を引き取る。
亡くなる前日、のばしていた髪をばっさり切った柳宿。亡くなった妹の面影を追ってしていた女装もやめた。
「生きてりゃあねえ!! つらいことでもいつか笑って懐かしく話せる時が来るのよ!」
微笑みをたたえた彼の死に顔と、シリーズ屈指の名セリフの合わせ技は落涙必至。
◆友情は男だけのものじゃない
作者の渡瀬は、四神それぞれにテーマをもうけているとコミックスのあとがきで述べている。朱雀は愛、青龍は友情だ。
青龍の巫女となった唯は、神獣を召還したあと巫女が生贄になるための存在だと知る。七星士の心宿(なかご)によって美朱を憎むように仕向けられ、利用されていた自分。
「あんたが…あたしを裏切ってないって…わかってたよ 鬼宿より…あたしのほうがあんたのことわかってるんだよ(…)一緒の高校行きたかったけど… バイバイ」
最後の願いで朱雀を呼び出す力を美朱に与え、未来を託して青龍に食われる。
◆「オレとおったらええ… いつも笑わしたるわ もう泣かんでもええんやで」
第1部と2部にわかれている「朱雀・青龍編」で、2部になって人気が急上昇したのが翼宿(たすき)だ。
魏(鬼宿の転生後の名前)の記憶の玉を探す旅の道中、敵の術にはまった翼宿は美朱への恋心を利用されてしまう。横恋慕されても、ぼこぼこに殴られても翼宿を信じる魏の思いが、術にほころびを生じさせる。
「オレは親友(ダチ)を裏切ったりせえへんぞォォォ!!」
と叫んだ翼宿を鉄扇の炎がつつむ。自分を燃やしてでも守りたかった友情万歳。
◆「死と生」がテーマの「玄武編」
玄武七星士・女宿(うるき)の従者ソルエン。元北甲国皇帝の父親に命を狙われ続けた女宿にとって、従者であると同時に家族である彼の死は、読者が選ぶ名シーンの1つにも選ばれた。
主人を守るため、1000人の兵士にひとりで立ち向かう絶望的な戦い。斬られる兵士ひとりひとりの人生を思いながら描いたとされる戦闘シーンは圧巻だ。
大粒の涙を流して悲しむ女宿の姿は、「朱雀・青龍編」で殺された家族の墓を泣きながらつくる鬼宿の姿とかさなる。…◆つながる物語
「朱雀・青龍編」の読者をニヤリとさせたのが玄武編の最終回。玄武七星士・斗宿(ひきつ)と虚宿(とみて)が霊魂となって登場したシーンだ。
虚宿「戦が終わりきらないうちに死んじまって…」
斗宿「無念でな 俺たちも巫女を最後まで見届けたかった───」
死しても捧げる巫女への忠誠。こののち、2人は200年後に美朱たちがくるまで神座宝を守護し続ける。玄武編を最後まで見たあと、朱雀・青龍編の第50回「氷の防人」と51回「危険な駆け引き」を読み直すと、2人が美朱を氷漬けにした理由がわかるのも楽しい。
「朱雀・青龍編」「玄武編」にはすでに「白虎編」と関わりがありそうなエピソードが随所に散りばめられている。白虎を祀る西廊国出身の女宿の母親、日没時に口づけをすると離れることがないという言い伝えがある寺院などだ。作者が絶賛したアニメ43話のオリジナルシーン、婁宿(たたら)の死の場面もどう影響をあたえるのか気になるところ。
昨年25周年をむかえた渡瀬は、「玄武編」の最終回インタビューに際しこう答えている。
《(ふしぎ遊戯は)もうライフワーク化したので、「四神天地書」の世界は完成させてひとつの輪にしたいです。朱雀、青龍編に戻ってきますので。》
種はもうまかれている。
「月刊flowers 4月号」
『ふしぎ遊戯』(Kindle版)
『ふしぎ遊戯 玄武開伝』(Kindle版)
(松澤夏織)