ホスト業界のブランディングとその先にあるもの ホスト社長の経営学

　

　今回は業界全体のブランディングを考えてみます。

　少し前まで、ホストクラブの経営者だと話すと「ちゃんとした経営してるの？」「渡した名刺、変なことに使わないでよ」と冗談めかして言われることがありました。ドラマで描かれるようなチャラチャラした職業だという偏見がそういう言葉になったのだと思います。

　しかし、私たちのグループには組織としての戦略があり、一般企業と同じような人材開発や店舗経営を行っています。それを知った方は私たちをビジネスパートナーとして捉えてくれるのですが、ふり返って業界全体を考えると偏見の払拭までまだ道のりがあります。

　問題の一つは、大部分のホストクラブがいまだ短期的な戦略（主に売上）しか見ていない点です。企業体として組織を整えるよりも目先の利益を追い、人材を育成するより安く使うことを求めがちです。せっかくホストというコミュニケーション能力に長けた人材を抱えているのに、歌舞伎町という小さな枠で売上だけを目標にビジネスをしている。これは本当に宝の持ち腐れです。

　彼らのスキルは、人間関係の大切さが見直されている今、ビジネスとして十分に活用できるものです。私はこのスキルをもっと社会に認知してもらい、価値を高めていきたいと考えています。

　そのための第一歩が「圧倒的・継続的なシェアNo.1になる」という目標です。これは業界のリーディングカンパニーをめざすとも言い換えられます。圧倒的なトップ企業が率先して良質な企業を組織し、有能な人材を育て、業界で新しいビジネスを生み出す。そうすれば他社も追随して、ホスト業界全体の地位が向上できると思うからです。

　今回の連載は「ホスト業界にもこんな考え方を持った経営者がいるのだ」と知っていただくために執筆しました。これからもビジネスシーンだけでなくセミナーや取材を通して新しい業界の姿を伝えていきます。

■冬月翔（ふゆつき・しょう）　１９８４年１月９日生まれ。２０１２年に歌舞伎町にホストクラブを３店舗同時にオープンし話題に。飲食店や美容業など２０数店舗を展開するグループを経営。さまざまな企業にアドバイスをすることも多く“コンサルホスト”とも呼ばれている。2015/4/2 16:56 更新